現役海運マンとしてモーリシャス沖貨物船油濁事故に関して思うこと
※こちらの記事は一定期間後、非公開または削除いたします
(出典元:モーリシャス、賠償請求へ 座礁日本船が完全に分裂 (写真=共同) :日本経済新聞)
8/18現在 モーリシャス沖で日本の海運会社 株式会社商船三井が運航していた
貨物船 「Wakashio」が座礁し、油濁事故が発生。
船体が真っ二つになり、現在も漏れだした燃料油の回収が進められている。
皆さんには普段馴染みのないであろう海運ビジネス。
私も普段、経済誌でしか、目にしないが、一般のニュースでも今回の事件を目にする
ことになり驚いた。
それほどまでに今回の事故の影響は大きい。
実は私は海運会社に勤めている。
まだ若手と呼ばれる類で、海運ビジネスに身を置いてる時間は長くはないが
今回の件で感じることや私の知っていることをシェアしたい。
そのために今回の記事の公開を決めた。
皆さんは今回の座礁事故・油濁事故に関してどう思っただろう?
・日本の会社がやっちゃったなあ、とか
・海を汚すのは一瞬、元の状態に戻すには何百年とかかる、など
様々な反応が見られる。
事件が事件なだけにネガティブなものが大きいが、
ニュースの報道の仕方や、日本と海外の反応の違いを見ると如何に海外の
環境への関心が高いかが分かる
まずはネットで見られた疑問に答えたい。
本件の事故を起こした船だが船籍が「パナマ」とある。
日本の会社の船なのに日本の船ではないのか?と思った方も多いかと思う。
これは便宜置籍船といい、正確には日本の会社がパナマに会社(と言ってもペーパーカンパニーだが)を置いて、その会社の保有としている。
なので日本の船ではないが、実質支配しているのは日本の会社という訳だ。
便宜置籍船は海運ビジネスには切り離せないもので、税制上の優遇や、船員の配乗などメリットが大きい。
ちなみに、日本籍船であると船員の構成に日本人の船員が必須になるが、パナマ籍であればフィリピン人やインド人で構成しても問題ない。
コストの高い日本人船員を配乗する必要がなくなりコストメリットがある。
ちなみに、船舶の状態は国際的に等級が決められ世界的に認められた海事機関で
認証を得ないと航海はできない。
基準を満たしていない場合はもちろん違反になり、その船が捕まってしまう危険がある。これは船籍関係なく決められている。
ちなみに私は邦船社で働いているが、邦船三社の安全への意識は非常に高い。
今回、事故原因についてWi-Fiの接続をしたかったからなどとネットでは色々と書かれているが、私は本当はそんなことはなかったのではないかと考えている。
まだ真実は分からないがじっと待ちたい。
今回、商船三井がこのような事故を起こしたが、邦船三社のどこかであれば
他社で起こっていてもおかしくはなかったと私は思う。
つまり、遅かれ早かれ人間が操縦している限り、どうしても事故というのは起こってしまうのではないであろうか。
本当に大事なのはその後の対応であり、誠実に対応することが真に意味のある行為であると考える。
さて、ここで少し話がそれるが
今回、環境問題が取り上げられた。
しかし、船を使わずにモノを運んだらどうなるだろう?
実は、知られていないかもしれないが、船というのは輸送手段の中で最も
二酸化炭素の排出量が少ない輸送手段なのだ。
船で運んでいる貨物を飛行機で運ぶことに仮になったとしよう。
それこそ環境へ大ダメージを与えてしまう。
そしてもう一つ考えて欲しいのは
船でのモノ輸送や海運というのは私たちの経済活動の中でなくてはならないものであるということ。
日本に限った話でいうと日本の貿易の約99.6%は船で行われている。
私たちの経済活動の結果、私たちの選択した結果が、今回の事故をもたらしてしまったと考えられなくもない。
なにも責任逃れや犯人捜しをする気は全くないが
普段、私たちの周りの物や手にする物はどこから、どうやって来ているのかほんの少しだけでいいので興味を持ってもらえたら嬉しく思う。
先日、半沢直樹の第五話を見ていて、帝国航空の再建の話でグッときたセリフがあった
戦後から空の安全を守るために誇りを持って働いているということであった。
第二次世界大戦中、日本の商船船隊は壊滅的ダメージを受けた。
あまり知られていないが、戦時中の犠牲者で一番多いのは商船の乗組員であった。
戦時中の商船は軍艦と間違えれて撃墜されることや、支援物資の運搬と疑われ撃ち落されることが多かった。
その後、日本の経済成長を支える為に、日本の物流・海の安全を守ってきたという
プライドがある。
普段は同業他社でライバルであるが、商船三井は誠意ある対応をすると信じている。
同じ志の中で働く仲間として応援したい。