日本の食文化に迫る「築地ワンダーランド」を見てみて。
築地が市場を開いてから80年。
築地の魚市場は豊洲に移動します。
そこで、築地の独特の市場の雰囲気、商人たちの関係、そして日本の食文化の伝統に迫った「TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)」を見てきました。
(※ネタバレ注意)
築地ワンダーランドについて
日本と言えば寿司、刺身。
つまり魚の食文化です。その食文化を支えてきたのは世界最大のフィッシュマーケット「築地」。
今年その築地が建物の老朽化などを理由に豊洲に移動することなり一旦80年の歴史に幕を閉じることとなります。
その築地の深い歴史には築地を支えてきた人達の思い、情熱があり、商人たちの競争の中での奇妙な信頼関係がありました、
それらをクローズアップした作品がこの「TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)」です。
世界最大のフィッシュマーケットと呼ばれる築地市場。その取引量はもちろんのこと、
長年にわたり集積した海産物にまつわる知識、技術においても他に類を見ない市場です。
古くは江戸時代まで歴史を遡る魚河岸は、日本橋から現在の地に移転し約80年、
日本の台所とも称され昔も今も我々の食文化を支え続けています。鮨、てんぷら、刺身、出汁
洗練・多様化された魚食文化、そして、世界的ブームにもなっている日本食を、
支えつくってきたものは何か? なぜ日本の魚は旨いのか?
世界を魅了する日本食文化の秘密は築地にあるのかもしれません。本作品では、築地で働く魚のプロフェッショナル集団=仲卸の人々の姿を通して
知られざる市場の本質、そして日本の食文化の真髄に迫ります。築地で働く人々の思い、プライドや粋、魚河岸文化は見る人を魅了するでしょう。
世代を超えて受け継がれる、知恵や匠の技には誰もが圧倒されることでしょう。予定される移転を前に、現在の築地市場の姿をフィルムに残す、
そして、築地という文化と日本人が築き上げてきた食文化の奥深さを
世界に、未来に、伝えます。
築地ワンダーランドを見ての感想
僕が今回この映画を見て感じたことが何点かあったので書きたいと思います。
人々の信頼
魚を実際に釣る漁師さん、そして寿司を握る寿司職人や料理人の人々。
その両者の間に立ち、自らの目利きで魚を仕入れ、売るのが卸売の人々、言わば仲介の仲買人。
そんな仲介の卸売の人々が活躍する舞台が「魚河岸市場 築地」です。
僕のイメージの中では仲介の仲買人というのはあまり良いイメージではないというのが正直なところでした。
というのも仲介の仲買というのは安く買って高く売るというイメージが強く、買い叩くイメージがありました。
しかし、築地の卸売の人々は違いました。
そこには卸売の人々と料理人の間に確かな信頼関係があり、お金という利害を越えた関係性がありました。
卸売の商人の言葉でそのことを象徴している言葉がありました。
「私たちが良い魚を買うから料理人の人が買うのではなく、料理人の人々が私たちを信頼して私たちから買ってくれるから私たちは良い魚を買えるのです。」
日本の四季
日本にはハッキリとした四季があります。
そしてその中でもちろん食材も料理も顔を変えて全く異なったものになります。
日本には「旬」と言った考え方があります。
食材の美味しい季節に最もその味を引き出す方法で頂く。それが日本の味の楽しみ方です。
料理人はもちろんその季節に合わせて味付けを変える。
春や夏の温かい季節にはサッパリとしたもの
秋や冬の肌寒い季節には味わいが深いもの
魚にも旬があります。
料理人が味付けを選ぶように仲卸の人々も魚を見極めなくてはなりません。
「基本的に太っているものは脂がのっている。でも太っているからと言って全部が良い魚とは限らないんだよ。」
四季によって築地に卸される魚というのは変わります。
つまり四季によって築地はいろいろな顔を見せるのです。
人々の仕事に対する真摯さ
築地の卸売の人々は常に仕事に対して真摯に向き合っているようでした、だからこそ、そこに楽しみが生まれる。
セリでは情報がカギを握ります。
翌日にその魚があまり入ってこないようなら買っておかなければならないし、反対に翌日にもその魚が入ってくるのなら無理に買わなくていい。
つまり情報戦なのです。
しかしそんな中でも築地では騙すことが悪とされません。
「築地ではだましあっていいんだ。プロが集まる場所なのだから騙される方が悪い。」
それほどまでに彼らは己の腕を磨き、それのみを信頼しなければなりません。
しかし、だからといってそこは牽制しあっているわけではありません。
「仲間買い」
もし自分にない商品で他のお店にあった場合それを買ってお客に売る。
親子何代と顔馴染みになり同じ場所で働き続けているかれらには「仲間」という意識があります。
同業者という枠を超えたそこには「騙してもいい仲間」という決してすぐには築き上げれない歳月をかけた奇妙な関係がありました。
日本食文化の伝統
今回の映画のメインテーマはここにあると思います。
なせなら「築地」という場所時代、古くからの流れを汲み変わることなく日本の食文化の伝統を守り続けている城の様なものだからです。
今、漁獲量は年々減少し、築地が開いた時には4000軒以上あった魚卸のお店も今では500、600軒と減少しました。
鮪の漁獲高は近年急激に落ち込み、鮪が食べれなくなる日も近いのではないかと言われています。
またインスタント食品などの普及により、若い世代や子供を中心に魚から遠ざかってしまっています。
「築地」で働く人々がどんな思いで魚を売っているか。
魚を料理する人はどんな思いでお客さんのどんな顔を想像しながら料理を作っているか。
そこにはなぜ、われわれが日本の食文化を絶やしてはいけないのか。
その答えのヒントがありました。
まとめ
僕がカナダに来て、一番日本のことを誇りに思ったのは日本食と国民性でした。
日本食料理のホールとしてバイトしていた僕は板前さん達と話す機会も少なくなく、板前さんたちの手間暇を惜しまない料理、食材に合わせた料理法など、日本食は他の国の食文化より抜きんでて繊細でした。
他の外国の人も寿司や日本食が好きと言っている人が多く、誇りに感じました。
この映画をトロントで見て、築地の人々の真剣さ、日本の食文化の素晴らしさを世界の色んな人に少しでも伝えることが出来てうれしく思いました。
伝統や習慣を続けたり守るのは難しいことだと思います。
でも、日本人として、この映画を見て続ける価値、守る価値があると改めて思いました。
築地という中にある奇妙な社会。
そしてそこに生きる人々。
守るべき、誇るべき文化。
多くのことを感じる作品でした。
築地ワンダーランドの公式サイトはこちらです。
初めてドキュメンタリー映画を見たのはこの時でした。
もう終わってしまいましたが本気でドキュメンタリー映画を作っている学生もいます。