福島の今を伝える。原発事故の真実を伝える。「大地を受け継ぐ」という作品は問いかけてくる。
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こんばんは。
みなさん「大地を受け継ぐ」という作品をご存知でしょうか?
今回はその映画のレビュー記事です。
自分はYahoo!ニュースで知ったのですがミニシアターでのみ公開されておりまだまだ知名度はそんなに高くないです。
しかし、このドキュメンタリー映画。内容は聞き書きそのもの。
話し手の樽川さんからのインタビューをただそのまま撮り映像化したものです。
なんの脚色もないドキュメンタリー映画。
だからこそ伝え手の熱が、温度が、辛さが、悔しさが、スクリーンを超えて伝わってきます。
そんな今だから見ておきたい。
「大地を受け継ぐ」。想いも言葉も真実も、受け継いでいかなければいけません。
・「大地を受け継ぐ」いったいどんな作品なの?
話し手は福島県の農家の樽川さん。
樽川さんの生活は震災後に急変します。
作物は出荷停止となり、補償額も一年目の8万円と二年目の4万のわずか12万円。
出荷できた野菜については当初売ってきた値段との差額分が補償として払われます。
彼の父親は彼にこう言い残し自殺しました。
「お前に農業を継がせたのは間違いだったかもしれない」
追い詰められ、自分の命に手をかけてしまいました。
父親の死後、樽川さんには様々な葛藤、苦悩が襲いかかります。
汚染野菜の出荷に対する罪悪感。
除染と言っても、もう元に戻ることはない大地。
親の死に対する裁判への親族からの当たり。
東電のファックスのみの対応。
その悔しさが、彼の手つきや目つきから感じとれます。
まさに感情がぶつかり、自らの感情が揺さぶられる体験でした。
・印象に残ったシーン
この映画は樽川さんのインタビューで構成されているのでシーンというかセリフなのですが。
映画の終盤で「福島県産のものを僕は避けてきました。このことについて率直にどう思いますか?」という質問がありました。
この問いに対し、「気持ちわかるよ。俺も食いたくない気持ちはよーくわかる。これは風評被害じゃねぇ。現実にあったことだ。根も葉もない噂じゃない。根も葉もあるんだもん。」という答えでした。
樽川さんは自分がここまで追い詰められた状況にいながらも東京の人の気持ちを考えることができるのかと驚きました。
福島原発で作られた電気は送電線を通って東京に送られています。
いわば私たちが使うための電気。その危機を背負ってくれていたのが福島に生きる人たちなのです。
だけどどうでしょうか?
私たちは樽川さんのように考えられていたでしょうか。気持ちを考える機会はあったでしょうか。
その結果が福島原発再稼働であると思います。
次は東京オリンピック。また多くのエネルギーが必要となります。
東京は、日本人は、いつ立ち止まるのでしょうか。
もっと考えなくてはいけないことはたくさんあります。
「ここらで立ち止まっておかしな方向に行かないように考えようよ。」
この映画はそう問いかけてくるようでした。
興味のある方、時間がある方、ぜひとも見ていただきたい一本です。